本当の感度 G/T

 

はじめに

 

  世の中ではほとんど馴染みがない言葉、G/T。G/Tは"GT比"とか"GオーバーT"とか言われます。通信分野の一部で使われている専門用語で、一般社会では登場する機会はありません。私は学生時代に通信工学も勉強しましたが、授業でもこんな言葉は出てきませんでした。そんなマイナーな言葉ですが、無線通信では重要な考え方です。衛星通信の分野では当たり前のように使われていますが、もっと低い周波数での地上通信でも当てはまります。ここではG/Tとは何を表す数字で、どんなことに利用できるか紹介したいと思います。

 

G/Tの親戚、NF(ノイズフィギア)

 

  無線家だったらNFは良く聞く言葉でしょう。日本語では雑音指数と表現され、無線機の「耳の良さ」を示す数字です。NFとは増幅器(無線機)に出入りする信号のS/Nの比で、式で表すと次のようになります。

 

              出力信号のS/N(真数) 

 NF(真数) = --------------------- 

              入力信号のS/N(真数)

 

  ただし、実際は対数(dB)で表示されることが多く、NF(対数) = 10×LOG10(NF(真数))となります。NFは小さければ小さいほど(0に近いほど)雑音が少ない優れた受信機ということになります。NF=3dBなら出力S/Nが半分に低下することを意味し、NF=0dBなら全く雑音がない受信機ということになります。ちなみに、一般的な増幅器だとNF=3dBはかなり性能がいい部類に入り、NFを気にしないものでは5dB以上が当たり前です。昔はバイポーラトランジスタのアンプしかなかったのであまり低雑音のアンプは作れなくて、天文学等の現場ではパラメトリックアンプと言われる特殊な増幅器を冷やして使っていたのですが、今ではGaAsFETを使った低雑音増幅器ではNF=1dBくらいの製品もあります。プロの世界だとHEMT(高電子移動度トランジスタ)を使う超高性能アンプもあり、数GHzのマイクロ波帯でさえNF=0.5dBが得られます。ペルチェ素子で冷やせばもっと雑音を抑えることができます。深宇宙探査用の低雑音アンプともなるとNF<0.1dBで、ほぼノイズ発生がない理想的なアンプです。お値段がいくらするのか知らないけど・・・・。

 

NFはシステム全体の感度を表していない

 

  これまでの説明でNFは分かったと思います。単純に言えば「無線機の耳の良さ」ですね。そう、あくまでもNFは「無線機単体」の耳の良さであることに注意が必要です。ご承知の通り、本当の耳の良さは無線機よりもアンテナに大きく左右されるので、いくら無線機のNFが良くてもアンテナがショボければ話になりません。それでは、NFと違ってアンテナの性能までひっくるめた本当の感度を表す指標はあるのでしょうか? 実はそれがG/Tなのです。G/Tは本当の耳の良さを表す数字で、アンテナと無線機、それに両者をつなぐ同軸ケーブルの損失で決まります。

 

G/Tの定義

 

 G/Tとは一言で言えば「受信アンテナ利得と受信雑音の比」です。G/Tと無線機で復調した信号のS/Nは比例関係にあり、G/Tが2倍向上すれば受信信号のS/Nも2倍向上します。ですからG/Tの数字を見ればどれだけ耳がいいか一目瞭然です。ちなみに正確な受信S/NとG/Tの関係は以下のようになります。

 

 見ての通り、相手の送信能力(送信アンテナ利得×送信電力)、受信側のG/Tに比例して受信S/Nは良くなり、相手との距離が遠くなって伝搬損失が増えるとS/Nは悪化します。ボルツマン定数なる遠い昔の物理の授業で出てきた定数が登場しますが、これは雑音の単位と関係するので後で述べます。

 

 さて、G/Tの詳細です。いきなりで申し訳ないですが、G/Tは次のような式で表されます。

 

                      受信アンテナ利得

  G/T(真数) = ------------------------------

               受信雑音の合計×ケーブル損失

 

 受信アンテナ利得に比例し、受信雑音とケーブル損失に反比例します。ここで言うケーブル損失とはアンテナ〜受信機間の同軸ケーブルによる損失です。この式の意味するところは受信アンテナ利得がこのケーブル損失分だけ下がったということです。よってケーブル損失がでかいとG/Tに大きく影響しますが、そんな場合はアンテナ直下プリアンプの出番です。

 

 くせ者は受信雑音です。みなさんは受信で聞こえる雑音は全て無線機内部で発生していると思っているでしょうが、なんと現実は全く違うのです。アンテナから入ってくる雑音(空間に飛び交っている雑音=空間雑音)もあればアンテナ内部で発生する雑音もあるし、おまけにアンテナ〜無線機間の同軸ケーブルの損失で発生する雑音すらあるのです。特に大きいのが空間雑音で、こいつは受信信号と同一周波数の雑音電波としてアンテナに入ってくるので除去は不可能な代物です。他の雑音(アンテナ内部雑音、ケーブル損失雑音)は損失で発生するもので、損失を減らす設計をすれば低減できまし、受信機雑音も低雑音増幅素子の使用で軽減可能です。なお、普通は空間雑音とアンテナ内部で発生する雑音を合計してアンテナ雑音と呼んでいます。

 

 ちなみにNF同様にG/Tも対数表現が一般的であり、G/T(対数)=10×LOG10(G/T(真数))で計算されます。NFと違って数字が大きいほど耳がいいことを示します。NFは一番良くて0dBですが、G/Tは上限が無く最大値は無限大です。ま、現実にはあり得ませんが。

 

雑音の単位、それは温度??

 

 普通、信号レベルは電圧や電力の単位(V、uV、W、mW、dBm、dBu等)で表されるのですが、雑音レベルの単位はなんと絶対温度[K]です。まあ、これでもボルツマン定数を介して電力と結びついているのですが。なぜ雑音レベルを温度表示にしたのか理由、経緯は分かりませんが、定義としては割と単純で、平たく言えば絶対温度t[K]のダミーロードが発生する雑音量をt[K]と表示します。なにもエネルギーを与えていないのに雑音が出てくるなんておかしいと思うかもしれませんが、雑音のエネルギー源は熱です。熱がある=原子が運動してるので自然に?雑音が出てしまいます。さて、これがどのくらいの電力になるか計算してみましょうか。発生する電力は以下の式で計算できます。

 

 1Hzあたりの発生電力=絶対温度[K]×ボルツマン定数[J/K]

 

  室温が27℃とするとダミーロードの絶対温度は300K、計算すると4.14×10-21[W]、dBmで表すと-173.8dBm(1Hzあたりなので総電力は帯域幅による)と、ほんの僅かな電力に過ぎません(当たり前)。イメージしがたいほどの僅かな電力でも、世の中で普通に使われる数桁の数字で表示できるので、人間としてはわかりやすいような気もします。

 

 そんなわけで、一部の通信分野では雑音レベルのことを「雑音温度」と呼んでいます。これは温度ではなく雑音量であることを忘れないで下さい。

 

最大の難関、アンテナ雑音

 

 雑音の中でもケーブル損失による雑音やNFによる雑音は簡単に計算できますが、非常に計算が難しいのがアンテナ雑音温度(アンテナ雑音量)です。そのうちアンテナ内部雑音はUHF以下でアマチュアが使うアンテナについてはあまり神経質になるような量ではないので、空間雑音に絞って考えてみます。

  空間雑音の発生源は、ちらと調べた限りではこんだけあるみたいです。

 

 1. 宇宙背景放射(ビッグバンの名残? 約4K)

 2. 銀河雑音

 3. 大気雑音

 4. 太陽雑音

 5. 大地雑音

 6. 空電(雷)

 7. 人工雑音

 

 周波数特性はありますが、全周波数で雑音が発生しています。雑音温度の項で話したように、熱を持つ物体(特に大地)から電波が放射される効果もあるようです。左に、ある文献に掲載されていた空間雑音のデータを示しますが、仰角がゼロ、つまりアンテナを水平方向に向けた場合が一番雑音が多く、真上に向けた時が一番雑音が少ないです(マイクロ波の場合)。仰角90度の雑音温度は宇宙空間から降り注ぐ雑音で、衛星通信に使用されるマイクロ波帯では4[K]と雑音が大変少なくなっています。これが衛星通信にマイクロ波が使われる理由で、空間雑音が少ないのでより小さなアンテナ、より少ない送信電力で高速通信が可能になります。周波数が低くなるにしたがって宇宙空間から降り注ぐ雑音が増えてS/Nが悪くなりますし、周波数が高くなると大気による減衰の影響が出てきて、損失による雑音温度の上昇が出てしまいます。衛星通信(宇宙通信)に適した周波数は限られているのです。

 

 おっと、話がずれた。1GHz以下の周波数では銀河雑音が支配的になります。ただ、こいつの周波数特性はどこまで周波数が下がってもレベルが増加し続けるのか知りません(^_^;)。どこかにピークがあると考えるのが妥当ですが、銀河雑音は衛星通信の回線設計でアンテナ雑音温度を決定するために研究されたもので、わざわざ雑音が多くて使えない低い周波数のデータはほとんど見かけません。以前、IEEEの論文をしらみつぶしに捜しましたが低い周波数については見つかりませんでした。図に示したアンテナ雑音の仰角90度(宇宙雑音に相当)におけるグラフの直線部分を近似式で表すと次のようになりました。

 

 雑音温度 t = 10-2.3×LOG(f[MHz]/1000)+0.3

 

 これを使って50MHzでの雑音温度を計算すると約2000[K]になりましたが、本当に正しいかどうかは自信がありません。インターネットで世界中のHPを捜したところ、アマチュア無線EME関連サイトで50MHzの宇宙雑音の具体的記述があり(正確かどうか不明)、それによると1500K(おそらく平均値)〜6000K(たぶん最大値)となっていました。別のHPで150MHzだと300K(平均値)〜3000K(最大値)というのも発見しました。これらを見ると2000Kというのは当たらずも遠からずってところでしょうか。

 

 なお、銀河雑音は宇宙に無数に散らばる銀河から放射されているはずなので、雑音源の銀河までの距離や銀河の分布状態でレベルが変わることが予想されます。最大値はアンテナが我らが天の川銀河系の中心を向いてしまったときの値だろうなぁ、最小値は全天の平均値かなぁ。アンテナを射手座方向に向けると雑音が大きくなるかどうか、誰かやってみて〜。夏の夜に見える星座なので、冬なら昼間に見えているはずです。

 

 地面から発生する雑音は、温度と同じ(ただし絶対温度)雑音温度を持っていて、銀河雑音のような周波数特性はないと考えられているようです。どの周波数でも約300[K]の一定値です。

 

 ということは、低い周波数では地面の雑音より宇宙雑音の方が大きく、マイクロ波と違って仰角が高いほど雑音が減ることはなく、ほぼ仰角に関係なく(もちろん地面に向ければ減るけど)宇宙雑音に満たされていることになります。運悪くビーム方向に銀河中心がきてしまった時は雑音が増えてしまいます。地上通信の場合、ビームは水平方向を向くのでビームの半分は宇宙雑音を受信し、半分は大地の雑音を拾うことになります。そうするとアンテナ雑音温度は1200K前後(ただし平均値)と考えられます。本当かなぁ?

 

 経験的に分かっていることは、少なくとも50MHz付近の雑音温度は、300[K]を遙かに超えていること。これは無線機のアンテナ入力にダミーロードをつないだ場合の雑音レベル(雑音温度=300[K])と、アンテナをつないだときの雑音レベルは、耳で聞いてはっきり差が感じられるほど違いがあることからわかります。アンテナをつなぐと雑音が増えるのがはっきりと聞き取れます。しかも、この雑音には無線機で発生する雑音(常時一定)が加算されているわけですから、アンテナ雑音の変化よりも耳で聞いた変化の方が小さくなっています。一度定量的に測ってみたいなぁ。そうすればVHF帯の雑音温度がどれほどか大まかな値は判明します。

 

 なお、マイクロ波帯にもなると宇宙雑音が数KのレベルになるのでVHFとは逆の現象が起きます。受信部にダミーロードを接続したときとアンテナを接続したときの雑音レベルを比較すると、VHFとは違ってアンテナをつないだ方が雑音が低くなります。マイクロ波では相対的に地面の雑音が大きく、サイドローブでこれを多少なりとも拾ってしまうためアンテナ雑音温度は数10Kになりますが、それでも50MHzと比較すれば1/10程度です。雑音が1/10も低いため同じ規模のアンテナなら送信電力を1/10にすることもできますし、同じ送信電力なら伝送速度を10倍に上げられます。逆に言えばVHF(の低い周波数)は雑音が多く、マイクロ波と同じ伝送品質を確保しようとしたら10倍の性能が必要だと言うことになります。特に衛星通信では伝搬距離が長くて減衰量が多く、ギリギリのS/Nで回線を稼働させているので、VHFのように雑音が多いと回線品質を確保するのにコストがかさむので使われません。もちろん、見通し範囲内のような近距離通信でしたら全く問題ありません。

 

 アンテナ雑音温度の計算方法ですが、大変難しいです。アンテナの全方向(水平、仰角ともぐるっと360度一周)の利得を計算し、それぞれの方向からやってくる雑音温度とかけ算し、全立体角分を積分して求められます。アンテナの指向特性はシミュレーションソフトで計算できますが、問題は全方向の雑音温度。近似でしのぐか? 立体角の積分も面倒です。全方向の雑音温度が一定だったらアンテナ雑音温度もその値になるので簡単ですが、場所によって大幅に温度が変わり、しかもでかいサイドローブがある場合は厳密に計算しないとアンテナ雑音温度は算出できません。

 

アンテナ雑音温度とビームパターン

 低い周波数の場合、空間雑音がでかいのとビーム方向の雑音温度が高いこともあって、ビームパターンとアンテナ雑音温度はあまり関係ありませんが、高い周波数でしかもビームが高い仰角を向いている場合は話が変わってきます。1GHz〜10GHz程度の周波数でそこそこ仰角が高い空の雑音温度は数Kしかありませんので、そこにビームを向ければ理想的にはアンテナ雑音温度も数Kになります。ところが、アンテナにはサイドローブが存在し、その利得で地面から出る雑音を拾ってしまいます。地面の雑音温度は約300Kですので、空と比べれば100倍も雑音を出しており、僅かでもサイドローブが地面にひっかかればアンテナ雑音温度が劇的に上がってしまいます。一例を挙げれば、例えばメインローブと比較して-20dB(1/100)のサイドローブが地面方向に1本出ていた場合、アンテナ雑音温度は2倍になってしまい、G/Tが半分になってしまいます。つまり、利得は同じでもビームパターンの善し悪しでG/Tが大きく変わってしまいます。すから宇宙通信を行うアンテナでは多少利得を犠牲にしてもサイドローブを減らす設計をしています。これをアンテナの低雑音化と言います。マイクロ波領域でも地上通信の場合はメインビームが水平線を向いていて雑音温度が高いため、相対的にサイドローブによる雑音温度上昇は少なくなります。

 

 パラボラアンテナでも八木アンテナでも設計次第でサイドローブを抑えることができます。八木アンテナの場合は、エレメント数が多くなるに従ってエレメント長、エレメント間隔の組み合わせが幾何級数的に多くなり、利得をできるだけ大きく、サイドローブをできるだけ小さくする最適化設計が難しくなってきます。利得だけ大きくするのは割と簡単ですが、サイドローブ抑圧と両立するのは技が必要で、そこが腕の見せ所とも言えます。正面利得については今のパソコン用のアンテナシミュレーションソフトで簡単に評価できますが、サイドローブについては計算はされますが、雑音温度として評価してくれるソフトにお目にかかったことはありません。正確な評価にはそれが欠かせませんが、G/Tの考え方自体が知られていないのでしょうがないでしょう。

 

 50MHzのように地面の雑音よりも空の雑音の方が多い場合は、いくら地面の雑音を拾ってもそれこそ"ゴミ"ですから、"ビームパターンのきれいさ"を優先するより利得優先のアンテナ設計が求められます。ただし、コンテスト等でカブリを防ぐ意味ではビームパターンのきれいさを追うのも大いに意味があります。

 

NF=0dBの理想受信機で受信しても・・・・

 

 今までの話で、雑音は無線機で発生するだけでなく、外からもやってくることがはっきりしました。ということは、もしNF=0dB、つまり全く雑音を発生しない無線機を使ったとしても雑音混入は避けられず、微弱な信号は雑音に埋もれてしまうことを意味します。常識的には理想の受信機ならどんな微かな信号でも受信できるように思えますが、そうではありません。例えば、今までNF=3dBの無線機を使っていたのをNF=0dBの無線機に変更したとして、どれほど耳が良くなるのかを計算してみましょう。ただし、アンテナ雑音温度は1200[K]とします。するとS/N向上(G/T向上値と同じ)は0.96dBとなりました。この位の値だったらアンテナを良くして利得を1dB向上させる方がよほど現実的でしょう、というかNF=0dBの受信は実現できないか。

 

プリアンプの効果

 

 現実のシステムの数字を使ってプリアンプの効果を確認してみましょう。使用周波数は50MHz帯とし、アンテナは6エレメント八木アンテナとして受信利得は10dBi、アンテナ雑音温度は1200K。アンテナと無線機間の同軸ケーブルは5D-2Vを15m使用する(ケーブル損失=1dB)と仮定し、無線機の雑音指数は3dBとします。G/Tを計算すると-22.18dB/Kとなります。一方、アンテナ直下に利得=20dB、NF=0.5dBのプリアンプを設置した場合のG/Tは-20.94dB/Kとなり、1.24dB向上することが分かりました。意外に効果があるようです。ついでにアンテナ直下にアンプを付けるのが面倒で無線機入力端に付けた場合も計算してみましたが、G/Tは-21.23dB/Kとなり0.95dB向上です。アンテナ直下設置より0.3dB悪いですが、これが許容できるかは考え方しだいでしょう。EXCELでG/T計算ワークシートを作りましたのでお使い下さい。ただし、バグが絶対無いとは保証できませんよ。

 

 ただし、この計算式がそのまま当てはまるとは限りません。無線機はAGCをかけていて強い信号が入ると受信利得を落としますが、このときNFも悪化します。ですからプリアンプを付けると無線機に入る雑音レベルが上がってプリアンプがないときよりAGCの効きが強くなってNFが悪化します。どのくらい悪化するかは無線機次第で予想不能。まあ、プリアンプが無いときより悪くなるとは考えられませんが、計算値より悪化してもしかたありません。また、信号入力レベルが上がるので無線機が混変調を起こしやすくなりますので、かえって逆効果になる可能性もなきにしもあらず。耳を良くする最も確実な方法はアンテナ利得を上げることです。この方法だと飛びも同時に良くなるのが最大のメリットでしょうか。ただ、アンテナが物理的に大きくなるので設置場所で制限されて実現できない人がほとんどでしょう。

 

 ちなみにこの数字は雑音が多い周波数だからであって、雑音が少ない周波数ではプリアンプは絶大な効果を発揮します。例えば周波数が145MHzまで上がってアンテナ雑音が300Kの場合、アンテナ雑音温度以外のパラメータがそのままだった場合は、アンテナ直下プリアンプ有りと無しではG/Tは3.44dBも差が付きます。高い周波数では同軸ケーブルの損失も大きくなるので、プリアンプは必需品といえそうです。

 

最後に

 

 G/Tの考え方はわかっていただけたでしょうか。高い周波数ではアンテナ雑音温度データが豊富なのでちょっと調べれば信頼できるデータを得られますが、低い周波数ではそうはいきませんでしたので自分でも確信が持てない数字になってしまいました。それでも低い周波数は雑音が多いのは間違いなく、他の周波数と比較して微弱な信号を受信するのに不利な周波数と言えます。しかし、電波伝搬については高い周波数では直接波かせいぜいダクトくらいしかないのが、VHFの低い周波数でしたらEスポ、スキャッタ、FAI、流星散乱、TEP等、色々な伝搬が存在し、雑音の多さを補って余りある楽しみを与えてくれると思います。この記事にメゲないで頑張って下さい。一方、高い周波数でEMEや衛星通信を楽しんでいる人には、ビームパターンの重要性が分かってもらえたと思います。アンテナを工夫して雑音温度を下げ、弱い信号も受信できるようあれこれ試してみて下さい。

 

JS1MLQ