Elecraft KX3 と ソフトウェア無線(Software Defined Radio)

1)ソフトウェア無線(Software Defined Radio)とは
SDR(Software Defined Radio)「ソフトウエアラジオ」は出力や周波数帯、変調方式などが異なるさまざまな無線通信手段を、 1台の無線機のソフトウエアを書き換えることで対応する技術です。SDR無線機では、汎用的なハードウエアを用いて通信を行い、従来は半導体が 行ってきた方式依存の処理の大部分をソフトウエアで行います。新しい通信方式が登場すると新しいソフトウエアを取得して通信機器に送り込む ことで、ハードウエアを交換する必要がありません。

Elecraft KX3はこのソフトウェア無線機(SDR)です。購入後でもファームウエアをアップする事で機能アップやバグ修正を行うことができます。 KX3は当然単体でも無線機として十分機能しますが、基本機能としてSDRソフト用に直交検波したI/Q信号の出力端子が装備されています。 このI/Q信号には現在受信中の信号以外に±20kHzの範囲の信号も含まれています。この信号を利用することで、K3のP3で見るような表示(スペクトラム表示・ウォーターフォール表示と言うらしいです)を見る事ができるそうです。そこでまずは色々試してみることにしました。

話は変わりますが
KX3には2波同時受信できる機能があります。受信できるのはVFO Aを中心に±20kHzの範囲なのですが、これって出力されるI/Q信号の 範囲と同じなんですね。PCを使わなくてもPCで聞ける範囲の信号はKX3自身でも聞けるんですね。あらためて関心しました。

2)PCとの接続
接続方法ですが

   SDRソフトでKX3をコントロールしますので付属のUSBケーブルを ACC1端子 に接続します。
   次にKX3の RX I/Q端子とPCのオーディオ入力端子を接続します。

これでPCとの接続は終わりなのですが、KX3から出力される I/Q信号は2チャンネルの音声出力なのでノートPCの場合は、外付けのサウンド・システムが必要になります。 一般にSDRでは、サウンド・システムのサンプリング周波数と同じ幅の周波数帯域が受信できますので、外付けのサウンド・システムを購入する場合スペックに注意が必要です。ただ、KX3は±20kHzの信号しか出力しませんので、基本的なスペックの44kHzサンプリングの16Bitの入力があればOKです。


今回のテストでSDRソフトを動作させるのがノートPCなので、ネットで調べ外付けのサウンド・システムを購入し接続してみました。
接続が終わったら、メニュー項目の[MENU:RX I/Q]の設定値を「ON」すれば終了です。


SDRソフトはKX3のオペレーションガイドにも記載のあったHDSDR(www.hdsdr.de)をインストールして、簡単に設定して起動したところ画面表示がはじまりましたので、一応接続はOKのようです。KX3のチューニングダイアルを回すとPCに表示されている周波数も自動的に変化しました。

3)HDSDRのセットアップ
HDSDRのホームページ「http://www.hdsdr.de」に行き、次に「Haedware」ページに移動しKX3用のセットアップ資料の「Elecraft-KX3_with_HDSDR.pdf」をダウンロードしてそれに従ってセットアップを行ないます。

「HDSDR」は接続する機器毎に環境情報を保持することが出来ますので、 ディクトップにセットされたHDSDRのアイコンのプロパティーを変更してパラメータの設定をお勧めします。

  -P: 環境ファイル名

このパラメータを設定してソフトをスタートすると、KX3用の設定ファイルを作ることができます。(HDSDRがKX3専用でしたらこの設定は必要ありません)


設定は左下にあるメニューを順番に設定します。
  • @Sound Card selection
    RX Input from Radio として 「USB Multi-Channel Audio Device」(ノートパソコンなので)を選択。
    RX Output (Speaker)はスピーカ出力する通常のサウンドカードを選択。

  • ASamplerate
    Input を 「96000」
    Outputを 音声信号(1200bpsのパケット信号を含む)の復調の場合は「12000」に設定します。

オプション「Options」項目の設定です。
  • @Select Input
    「Sound Card」を選択します。

  • ARF Front-End + Calibration
    「2-1」の画面の項目を 「Elecraft-KX3_with_HDSDR.pdf」の資料にしたがって設定します。

  • BCat to Radio (Omni-Rig)
    「3-1」 Omni-Rig Setup の内容をKX3の設定に合わせて設定します。
    「3-2」Cat to Radio (Omni-Rig)の画面を 「Elecraft-KX3_with_HDSDR.pdf」の資料にしたがって設定します。(基本「sync Rig1」をチェックするだけでOKです)


これでHDSDRソフトからKX3をコントロールする事が可能になります。

    ※RX I/Q端子とACC1端子は当然接続します。

セットアップが完了したところで、 STARTボタンを押して起動させると、KX3の受信周波数にあわせて画面表示がでてきます。


ただ、表示できる範囲はKX3が出力するVFO Aを中心に±20kHzの範囲なので7MHzでは(7.050MHz:7.030MHz〜7.070MHz)とSSBの混信している状態がみれるのですが、50MHzでは (50.200MHz:50.180MHz〜50.220MHz)となりあまり面白い画面にはなりません。このソフトにはマニアルが無いので細かい使い方はこれから勉強となります。(素人向けのマニアルが欲しいですね)

4)運用
7MHzでテストしてみました。
まずは基本画面を表示してみました。KX3のチューニングダイアルを回すとPCに表示されている周波数も自動的に変化して、スピーカーから復調された声が聞こえてきます。

次に「Options」項目の「Visualization」の「Show Upper Display only (Collapse)」にチェックをつけると表示が Waterfall/Spectrum Display画面に変更されます。
元に戻すには「escキー」を押します。

これでP3モドキの画面になります。

5)その他
KX3でSDRソフトをいじっていてSDRソフトにはまってしまい、ついに USBスティックのSDR(ソフトウェア無線)受信機「FUNcube Dongle Pro Plus」を購入してしまいました。
「FUNcube Dongle Pro Plus」のサンプリング・レートは192kHzと広いので、これを使って受信すると 50.230MHz±96kHz:50.134MHz〜50.326MHz までを同時に受信できますので、50MHzの運用状況が見渡せます。受信内容を ファイルに記録もできますので後から各局の交信を聞くことも出来ます。SDRソフトて凄いですね。



ほるす(後藤 @ JR1NNL )